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日本の高断熱・高気密

日本における高気密・高断熱住宅導入のきっかけ

元来日本の家は「夏を旨とし」開放型の住宅を建築してきました。しかし北海道や東北地方などの寒冷地ではとても寒くて生活できません。戦後の豊かな発展もあり北欧や北米から寒さを防ぐ寒冷地仕様の工法が導入されました。それが日本の高気密・高断熱住宅の始まりです。

そして関東や関西でも冬の寒さは嫌だと言う事で広がった工法ですが、今度は温暖な地域では水蒸気も多く、夏暑すぎるという問題が出てきました。最近聞いた話では九州で北海道並の高断熱住宅を販売したら、夏が暑すぎ電気代がバカ高くなり、大クレームになったと聞きました。

このように高気密・高断熱住宅も全ての地域で有効と決め付けるのも間違いであるのです。そこで住宅金融公庫は日本の地域をⅠ地域からⅤ地域(Ⅵ地域として沖縄など)(Ⅰは一で北海道など、Ⅴは五で宮崎県、鹿児島県など)まで分けて、それぞれ断熱材の厚み基準を設けています。これにより一応その地域にマッチした住環境が得られるようになりました。

従来の家の問題点は、そして高性能住宅の歴史

昔といっても半世紀ぐらい前から日本ではアルミサッシが普及しだしました。そのアルミサッシは気密性が高く、それまであった隙間風を大幅に減らしました。またその頃は練炭を燃やす火鉢が多かったのですが、電化製品の普及により石油ストーブやコタツも登場しいわゆる「採暖」から「暖房」に移行してきました。(今でも採暖に近い家は多いですが)

しかし気密化が進むと今度は換気の問題が出てきます。石油ストーブは空気を汚すからです。そこで計画換気という考え方が導入され昨今では義務化されています。しかし元々北欧などでは高断熱・高気密住宅には切っても切り離せない換気はセットとなっていたのです。ですが我が日本では断熱部分だけに目がいき、換気や後々出てくる結露現象まで気が向きませんでした。

確かに石油ストーブで和室やダイニングは暖かいのですが、他のホールや階段、トイレやお風呂までに暖気が行かずヒートショックを起こしやすくなり脳卒中で倒れる方が多くなりました。また換気が不十分なのと防湿層工事の不十分からくる内部結露により。躯体が腐る現象が後をたちませんでした。

品確法の制定と性能表示

2000年ミレニアムの年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が制定され、この法律の目的は欠陥住宅から消費者を守るために作られた法律と紹介されております。屋根、躯体、基礎と主要な構造躯体の10年間の瑕疵保障制度の義務化が品確法、住宅の性能の表示基準が性能評価です。

性能表示では

  1. 構造の安定
  2. 火災時の安全
  3. 劣化の軽減
  4. 維持管理への配慮
  5. 音熱環境
  6. 空気環境
  7. 光・視環境
  8. 音環境
  9. 高齢者への配慮

と大きく9項目ありますが、各項目それぞれに詳細が分類されており例として挙げるなら「構造の安定」では

  1. 耐震等級(構造躯体の倒壊など防止) 3.2.1
  2. 耐震等級(構造躯体の損傷防止) 3.2.1
  3. 耐風等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止) 2.1
  4. 耐積雪等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)【多雪地域のみ】 2.1
  5. 地盤又は杭の許容支持力等及びその設定方法 (検査表示)
  6. 基礎の構造方法及び形式等 (表示)

とあり、6項目あります。10年間の瑕疵保障制度とともに住宅の高性能化へ大きく寄与し日本の住宅事情も変わり、今では多くの工務店、ビルダーが高性能な住宅を提供するようになりました。

瑕疵保障から瑕疵担保責任保険へ

 ところが2005年11月に姉歯元一級建築士による耐震偽装問題がおきました。マンション販売元のヒューザーが結果的に倒産しました。倒産した以上瑕疵の問題は是正されるはずがありません。

販売したマンションは耐震基準に満たないのですから明らかな瑕疵です。いえ、瑕疵とは見えざる欠陥という意味ですから、壁の中で見えないという瑕疵の問題ではなく、耐震偽装は犯罪で相当あくどいです。そして本来なら是正されるべきですが、ヒューザーに資力がないのですから是正できる訳がなく倒産しました。

姉歯含めマンション販売の関係者は断罪されましたが消費者は保護されません。それでこの事件をきっかけにより、より消費者保護を強化し出来上がったのが「瑕疵担保履行法」でこれは義務のレベルを超えて強制保険です。

新築住宅販売ではこの保険がないと販売できません。そして保険制度になったので万が一販売元が倒産しても保険機関が保証をしてくれるようになったのです。実に消費者保護になっております。

そして住宅の高性能化と言えば長期優良住宅普及促進法が平成20年12月に施行されました。 いいものをつくり、手入れしながら長く使用していく「ストック型社会」の実現に向け、長寿命住宅のあり方とその維持保全をまとめたものがそれであり、200年住宅ビジョンなのです。

  • 国が「長期優良住宅」の認定基準を明確化 
    (これは住宅性能表示制度をベースにして
    おります。)
  • 認定基準、住宅履歴体制、維持保全計画を所管行政庁が審査、認定

認定基準は

  • 劣化対策  劣化対策等級3
  • 耐震性    耐震等級2以上
  • 維持管理  維持管理対策等級3
  • 省エネ性  省エネルギー対策等級4

となります。この他住宅履歴書作成、保存・維持保全計画30年以上の計画の作成など必要な事があります。 日本の住宅は高性能化へ向けて進んでいます。

今後の課題と対応

今後の課題とて、住宅の長寿命化にはプラスアルファの価値ある住宅設計が望まれます。単なる高耐久の家だけではなく、ユニバーサルデザインを取り入れ、高齢化社会の為に住環境の整備も必要です。防犯性も高くないと安心して生活出来ません。

マンションのデベロッパーや大きな分譲をおこなうパワービルダーはその地域の住環境を考え、機能的で、デザイン性に優れ、それでいてその地域にマッチした街づくりが求められると考えます。よくある自己満足だけの戸建だとヨーロッパの優れた街並みのように美しい街づくりは実現しません。

「景観法」という法律はご存知でしょうか?少し紹介します。

Wikipediaより
日本では高度成長期以降、全国どこへ行っても地域全体の調和・美観・伝統を軽視した住宅やビル、工場、護岸などの建築物・構造物が次々に建てられ、街並みや自然景観から調和や地域ごとの特色が失われていった。良好な景観や環境を求めるよりも、経済性が優先され、建築基準法や都市計画に違反しない限りどのような形態の建築物でも建てることができる「建築自由の国」と揶揄される状況になっていた。

その結果、長い年月をかけて形成された伝統と風格と調和のある街並みが都市を含む各地に残っているヨーロッパなど諸外国と比べて、無秩序でみすぼらしいといわれる今日の状況に至った。一方で、各地で高層マンションの建設などをきっかけにしたトラブルや屋外広告の氾濫などによって景観の価値に対する意識が次第に高まっていった。 「以下略す」

その目的として
「この法律は、日本の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする」(第1条)。
とあります。

個人的にはこの景観法を行政はもっともっと取り入れるべきだと思います。それが価値ある街並み、資産ある街並み、海外から尊敬される街並みを形成し人々の意識も高まり自己の住んでいる街を愛し、巡り巡って国は衰退を免れ発展すると感じております。

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2011年2月13日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:建築技術

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